地域連携の取り組み~長谷先生に学ぶ「食形態マップ」の作り方~
【監修】公立能登総合病院
歯科口腔外科 部長

長谷剛志先生

2013年に「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」が発表されましたが、病院や施設の食形態は独自の呼称が使われています。施設間の情報伝達を正確に行い、患者様や入居者様に適切な食事が提供できるよう、各地域で様々な取り組みが行われています。

公立能登総合病院歯科口腔外科部長 長谷剛志先生が代表を務める「食力(しょくりき)の会」では、2011年から能登地域の病院や施設で「食形態マップ」を作成し地域連携に大いに活用されています。これから地域での食形態マップ作成の取り組みを始めたい、という方へ、長谷先生に作成の手順とコツを教えていただきました。

食形態マップ作成のながれ
1.食形態マップ作成委員会の立ち上げ
  • 食形態マップの意義は、地域で患者様の情報伝達を正確に行うために、食形態の共通認識を持つことです。先ずは「食形態マップ」の作成に取り組むメンバーを集め、作成の意義を確認し、取り組み内容やスケジュールを決定します。
  • メンバーは管理栄養士を中心に、言語聴覚士や歯科医師など多職種で構成します。
  • 必要に応じて嚥下障害や嚥下調整食についての勉強会を行い、施設間、多職種間で食形態マップの必要性と意義を理解し、目標を明確にした上で進めます。
2.地域の食形態の実態調査
  • 地域の病院・施設で提供されている食形態の呼称を調査します。
  • 食形態マップの取り組みの意義の説明と共に協力を呼びかけ、協力の意思を確認します。

3.分類対応表の作成
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」をベースに分類対応表を作成します。地域の食形態の実態調査の結果が網羅できるような分類に調整します。能登地域の食形態マップは、各コードを色で識別しやすくした上で、コード4を「やわらかさ」と「大きさ」別に6パターンに分類し、学会分類にはない、コード4以上の「一般食」の分類を設けています。

4.施設への説明会実施・記入の依頼
  • 協力を得られた病院・施設の担当者に対し、説明会を実施し、登録用紙の記入を依頼します。
  • 説明会では、食形態マップの概要や活用方法、登録用紙の記入方法の説明を行います。
5.各施設の食形態を分類対応表に応じマッピング
  • 登録用紙を元に各施設の食形態を分類対応表に応じてマッピングを行い、食形態マップを完成させます。
  • 分類対応表に準じ、各施設で提供している食形態の「呼称」、「写真」、「コメント」を記入します。
  • 能登地域の食形態マップは、1施設につき1枚のシートに、①主菜と副菜、②主食という2つの表に分けて記載するフォーマットにしています。
  • 該当する食形態がない場合は空欄にし、背景の色を白くします。そうすることで、どの区分の食形態があるかが識別しやすくなります。
6.食形態マップの周知
  • 地域の各施設の食形態マップが完成したら、冊子として取りまとめ、食形態マップを周知し、活用をすすめる取り組みを行います。
  • 多職種への情報提供や、活用する中で得た成果を報告するなど、色々な場面で食形態マップの周知を行っていきます。継続して協力施設を拡大させていく活動も行っていきます。

7.情報の更新
正しい情報提供を行うため、定期的に内容に変更がないか確認を行い、更新していきます。
能登地域ではホームページで情報を公開し、年一度情報の更新を行っています。
このような取り組みを通して地域の嚥下調整食や食形態の理解が深まり、患者様・利用者様のQOLの向上につながるだけでなく、施設間、多職種間での連携が円滑に行われることを期待しています。