BCP(Business Continuity Plan 業務継続計画)とは、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことをいいます。
令和3年度介護報酬改定で、介護事業者にBCP策定が義務化されました。2024年4月から、すべての介護事業者がBCPを策定し、あらゆる不測の事態に備えておく必要があります。災害や感染症が発生した場合でも、利用者が継続して介護サービスを受けることができる体制を構築する観点から、BCPを策定し、策定したBCPに基づき研修や訓練、見直し・改善していくことも必要です。食事提供のためのBCPの基本は備蓄品です。
BCPは平常時から運用し、事前の準備を行うことで介護サービスを中断させないことを目指します。
●必要な備蓄品をリストに整理し、計画的に備蓄する
飲料水や食品をリストアップし、関係者に情報を共有します。いざ使用する時に賞味期限切れ、ということがないよう、担当者を決めて定期的に買い替えるなどのメンテナンスすることが必要です。担当者が不在になることを想定し、代行者も複数名決定しておきます。
●献立を準備する
備蓄品を使用した献立表や調理指示書を作成します。必要に応じて普通食ややわらか食など、食形態別に献立を用意します。研修の機会に実際に調理や試食を行いましょう。
●保管場所を検討する
水害のリスクが高い地域の場合や、災害時に重い備蓄品を運ぶことなどを考慮し、階下にまとめて備蓄品を保管することは避け、上層階や分散して保管することがリスク回避になります。保管場所の施設内地図や写真なども共有しておきましょう。
特別養護老人ホーム マザアス日野 栄養課 課長 正木直子先生に伺いました。
「マザアス日野では、利用者様と職員用に長期保存可能な備蓄用飲料や食材5日分を用意しています。施設内の防災委員会で、災害時の献立や、備蓄品の内容・保管場所等の情報を共有し、賞味期限前に使用するようにしています。嚥下が困難な方には一部ローリングストックでカップゼリー等を使用します。数年前の台風では、栄養課も協力して下層階の利用者様の上層階への移動を行いました。様々な状況に対応できるよう準備しています。」
災害時は人的資源や食事の準備にかけられる時間も不足します。食事の提供に必要な要素をおさえつつ、状況に応じて対応できるよう食品を選定しましょう。
●使用しながら備える、ローリングストックで!
日頃から食べ慣れた食品だと、災害時のストレスも軽減されます。
そして何よりおいしい食品を選ぶことが大切です。
●限られたヒトと時間でできる備えを
・熟練スタッフが不在の状況を想定し、準備が簡単な食品を選定しましょう。
・置き場所をとらないコンパクトな商品を選定しましょう。
・利用者だけでなく職員用も含めた数を用意しましょう。
●食形態・栄養成分の注意点
・災害時はおにぎりやパンなど、炭水化物に栄養が偏りがちです。たんぱく質、ビタミン補給にも配慮しましょう。
・常食が適さない方のためには、咀嚼・嚥下しやすい食品を選定しましょう。普段から使用している食品だと、
使い方に戸惑うことなく、スムーズに提供できます。
●ビタミン不足に備える
災害時の食事は炭水化物に偏りがちです。水分と一緒にビタミン補給を。
ヴィタッチ飲料
●やわらか食の栄養補給に
常食が適さない方には少量で栄養が補給できるやわらか食が便利です。
パンがゆミックス
快食応援団 なめらかおかゆ・おじや
快食応援団 おかず
ふんわりムース
●人手不足に備える
混ぜるだけで誰でも簡単に作れる商品で、とろみづけが必要な方の水分補給に。
イオンサポートとろみタイプ