やわらかさの分類
食形態の分類
現在、適切な食形態への様々な取り組みがあり、食形態の分類が多数あります。
退院や転院時の共通言語として、機能に応じた食品を適切に選択できる目的で利用されています。

1.学会分類2021
正式名称「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」
日本摂食嚥下リハビリテーション学会が2013年に公表。病院・施設・在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的に、食事5段階およびとろみ3段階について段階分類をしています。簡便のための早見表と解説があり、原則的に段階を形態のみで示し、量や栄養成分については設定していません。学会分類2021では、コード4の「他の分類との対応」のUDF区分に「舌でつぶせる」が追加され、学会分類2021(とろみ)早見表の「シリンジ法による残留量」が追加されました。

学会分類2021 (食事)早見表

本表は学会分類2021(食事)の早見表です。
本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食分類2021」の本文をお読みください。
なお、本表中の【 】表示は、学会分類2021本文中の該当箇所を指します。
上記0tの「中間のとろみ・濃いとろみ」については、学会分類2021(とろみ)を参照ください。
本表に該当する食事において、汁物を含む水分には原則とろみをつける。【I-9項】
ただし、個別に水分の嚥下評価を行ってとろみ付けが不要と判断された場合には、その原則は解除できる。
他の分類との対応については、学会分類2021との整合性や相互の対応が完全に一致するわけではない。【I-7項】

学会分類2021 (とろみ)早見表

本表は必ず「嚥下調整食分類2021」の本文を併せてお読みください。
なお、本表中の[ ]表示は、本文中の該当箇所を指します。
粘度:コーンプレート型回転粘度計を用い、測定温度20℃、ずり速度50s-1における1分後の粘度測定結果[Ⅲ-5項]。
LST値:ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて内径30mmの金属製リングに試料を20ml注入し、30秒後にリングを持ち上げ、30秒後に試料の広がり距離を6点測定し、その平均値をLST値とする[Ⅲ-6項]。
注1. LST値と粘度は完全には相関しない。そのため、特に境界値付近においては注意が必要である。
注2. ニュートン流体ではLST値が高く出る傾向があるため注意が必要である。
注3. 10mlのシリンジ筒を用い、粘度測定したい液体を10mlまで入れ、10秒間自然落下させた後のシリンジ内の残留量である。

学会分類2021(とろみ)に基づく各種使用目安量一覧

県立広島大学 栢下淳教授 監修
測定方法・条件:とろみ調整食品を蒸留水(20℃ ±2.0℃)に添加し、3回/秒の速さで30秒間撹拌。その後、30分間設定温度20℃でインキュベート。インキュベート終了後にコーンプレート型回転粘度計(設定温度20℃、ずり速度50s-1における1分後の粘度:学会分類、コーンアングル1°直径35mm)で粘度を測定。
使用量は飲料により異なりますのであくまでも参考としてください。また、各社の測定値と異なる場合がございます。
とろみ調整食品の種類によって、粘度以外の特性(付着性等)が異なるため、使用に際しては、まず試飲していただくことをお願いいたします。
本表は商品の優劣を決定するものではありません。実際の使用量、使用方法は、医師、栄養士等の指導に従ってください。

学会分類2021と他分類の対応

態、特色などの詳細は 「嚥下調整食分類2021」の本文及び学会分類2021(食事)早見表をご確認ください。
他分類の対応に関して:嚥下食ピラミッド、えん下困難者用食品許可基準、UDF区分は「学会分類2021(食事)早見表」を、スマイルケア食は「スマイルケア食の選び方」を参考に当社が作成したものです。
学会分類2021に対応する内容のみ記載しておりますので、嚥下食ピラミッド「L5普通食」、スマイルケア食「5容易にかめる」、「青マーク」の記載は割愛しております。
学会分類2021に対応していない場合は「-」を記載しています。

2.特別用途食品(えん下困難者用食品)
2009年厚生労働省が策定。現在は消費者庁が管轄。特別用途食品(えん下困難者用食品)は、えん下困難者に適するという特別の用途について表示するものです。硬さ、付着性、凝集性の許可基準によりその適合性を審査し、国(消費者庁)の許可を受けて表示します。許可基準I、Ⅱ、Ⅲに分類されています。「許可を受けるべきえん下困難者用食品(えん下を容易ならしめ、かつ、誤えん及び窒息を防ぐことを目的とするもの)たる表示の適用範囲については、えん下困難者の用に適する旨を医学的、栄養学的表現で記載されたものに適用されるものとする。」と規定されています。

特別用途食品(えん下困難者用食品) 規格基準

※1常温及び喫食の目安となる温度のいずれの条件であっても規格基準の範囲内であること。
※2均質なもの(例えば、ゼリー状の食品)。
※3均質なもの(例えば、ゼリー状又はムース状等の食品。ただし、許可基準Ⅰを満たすものを除く。
※4不均質なものも含む(例えば、まとまりのよいおかゆ、やわらかいペースト状又はゼリー寄せ等の食品)。ただし、許可基準Ⅰ又は許可基準Ⅱを満たすものを除く。

特別用途食品の表示許可等について

3.ユニバーサルデザインフード(UDF)
日本介護食品協議会が2002年に作成。日本缶詰協会の呼びかけにより介護食品を製造するメーカーが、利用者にわかりやすい表示をするための自主規格として策定されました。かたさと粘度の物性規格により4つの区分に分類し、区分のマークを商品に表示して販売しています。「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4つの区分に分け、かむ力の目安、飲み込む力の目安、かたさの目安が示されています。とろみ調整食品については、とろみのつき方を3~4段階で表示を統一。2017年に区分を表す、1~4の番号が削除されました。

ユニバーサルデザインフードの選び方(区分表)

とろみの目安の表示例

日本介護食品協議会ホームページ

4.嚥下食ピラミッド
金谷栄養研究所所長金谷節子氏が2004年に発表。摂食・嚥下の難易度にもとづき、普通食から嚥下食までの6段階のレベルに分類。 訓練食(レベル0~2)、嚥下食(レベル3)、介護食(移行食)(レベル4)、普通食(レベル5)とする6段階に層別化しています。かたさ、凝集性、付着性で基準化されています。

嚥下食ピラミッド

嚥下食ドットコム

5.スマイルケア食
2014年農林水産省が作成。高齢者のみならず食機能(噛むこと、飲み込むこと)や栄養に関して問題があるという方々に、幅広く介護食品を利用していただけるよう、介護食品の供給拡大に向けた検討を行い、スマイルケア食の枠組みを整備。「スマイルケア食」は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク(4段階)、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マーク(3段階)を表示します。早見表は利用者の状態に応じて問いに答え、矢印に沿って進んでいくと適切なスマイルケア食が選べる構造になっています。各マークの使用を希望する製造メーカーは利用許諾ルールに適合していると自己適合宣言した上で、農林水産省に申請し使用許諾を得ます。

スマイルケア食の選び方

新しい介護食(スマイルケア食) 農林水産省ホームページ

6.嚥下調整食分類2018
正式名称「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」
日本摂食嚥下リハビリテーション学会が2018年に公表。
「学会分類2013」は主に成人の中途障害者のための分類ですが、本分類は充分な摂食嚥下機能を獲得していない、発達期摂食嚥下障害児(者)の摂食嚥下機能発達促進に資することを目的に策定されました。主食と副食それぞれ4分類、液状食品(飲料・ミルク)5分類を設定し、主食、副食については、各分類に水分やとろみ調整食品、ゲル化剤を加えるなどの手元調整による展開例を示し、個々の状態に合わせた対応ができるように配慮されています。対象の特徴や、各分類の説明の他、使用上の注意点なども紹介されています。

発達期嚥下調整食分類(主食表)

発達期嚥下調整食分類(副食表)

「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」
「発達期摂食嚥下障害児(者)のために『嚥下調整食分類2018』を活用するために」
7.IDDSI
国際嚥下食標準化構想(IDDSI:International dysphagia standardisation Initiative)は2013年に考案。
0~7の8段階の範囲からなる嚥下食フレームワークを作成しています。食品レベルの確認を行うため、フォークドリップテストやスプーン傾けテストなどの簡易なテスト方法が定められており、シリンジに入れた液体が10秒後に残った量を確認するフローテストは学会分類2021にも採用されました。ただしIDDSIではBDシリンジ、日本ではテルモ社製シリンジが推奨され、数値が異なります。

IDDSIフレームワーク

IDDSIホームページ