食事摂取基準
日本人の食事摂取基準(2020年版)主な改訂ポイント
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の改訂のポイントと、2015年版からの変更点を報告書から抜粋してご紹介します。
2020年版は高齢社会の更なる進展を踏まえ、高齢者の低栄養・フレイル予防を新たに視野に入れて策定されました。
活用に当たっては報告書をご覧ください。
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会 報告書

主な改訂のポイント

【策定方針】

策定の目的に「高齢者の低栄養・フレイル予防」が追加されました。

  • 健康の保持・増進
  • 生活習慣病の発症予防
  • 生活習慣病の重症化予防
  • 健康の保持・増進
  • 高齢者の低栄養予防・フレイル予防
  • 生活習慣病の発症予防・重症化予防
フレイルについては以下のように紹介されています。
対象とする個人及び集団の範囲としては、「高齢者においてはフレイルに関する危険因子を有していたりしても、おおむね自立した日常生活を営んでいる者及びこのような者を中心として構成されている集団は含むものとする。具体的には、歩行や家事などの身体活動を行っている者であり、体格(BMI)が標準より著しく外れていない者とする。フレイルについては、現在のところ世界的に統一された概念は存在せず、フレイルを健康状態と要介護状態の中間的な段階に位置づける考え方と、ハイリスク状態から重度障害状態までをも含める考え方があるが、食事摂取基準においては、食事摂取基準の対象範囲を踏まえ、前者の考え方を採用する。」

たんぱく質、カルシウム、ビタミンD等にフレイル予防の記載が追加されました。

たんぱく質 報告を紹介、フレイル改善のためのたんぱく質量について結論は出ていない。
カルシウム フレイルに関係すると考えられるが予防のための量を設定するには根拠不足。
ビタミンD 骨折予防に寄与している可能性が考えられる。フレイル予防を目的とした量を設定するには科学的根拠がない。日光浴を心がけることを推奨。

【年齢区分】
高齢者の年齢区分が変更され、前期高齢者と後期高齢者が区分されました。

年齢(歳)
18~29
30~49
50~69
70以上

年齢(歳)
18~29
30~49
50~64
65~74
75以上

【目標BMI】
フレイル予防を考慮し、65~69歳の目標とするBMIの範囲の下限が引き上げられました。

年齢(歳) 目標とするBMI(kg/m2)
18~49 18.5~24.9
50~69 20.0~24.9
70以上 21.5~24.9

年齢(歳) 目標とするBMI(kg/m2)
18~49 18.5~24.9
50~64 20.0~24.9
65~74 21.5~24.9
75以上 21.5~24.9

【たんぱく質】
フレイル及びサルコペニアの発症予防を考慮し、50歳以上の目標量の下限値が引き上げられました。

年齢(歳) 目標量(中央値)(%エネルギー)
18以上 13~20(16.5)

年齢(歳) 目標量(%エネルギー)
18~49 13~20
50~64 14~20
65以上 15~20

たんぱく質維持必要量は、0.65から男女共全年齢区分で同一の0.66に変更されました。

【ナトリウム】
食塩相当量の目標量が引き下げられました。

性別 目標量(食塩相当量・g/日)
男性 8.0
女性 7.0

性別 目標量(食塩相当量・g/日)
男性 7.5
女性 6.5

高血圧・CKD重症化予防のための量が追加されました。
→高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量の量は男女とも6.0g/日未満とした。

高齢者の極端なナトリウム制限(減塩)は注意が必要です。
→高齢者では食欲低下があり、極端なナトリウム制限(減塩)はエネルギーやたんぱく質を始め多くの栄養素の摂取量の低下を招き、フレイルにつながることも考えられる。したがって、高齢者におけるナトリウム制限(減塩)は、健康状態、病態及び摂食量全体を見て弾力的に運用すべきである。

【コレステロール】

脂質異常症の重症化予防を目的とした量が新たに設定されました。 (飽和脂肪酸の脚注に記載)
→脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。

【ビタミンD】

目安量が引き上げられました。

年齢(歳) 目安量(μg/日)
18以上 5.5

年齢(歳) 目安量(μg/日)
18以上 8.5

「日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、適度な日照を心がけ、ビタミンD摂取においては、日照時間を考慮に入れることが重要である。」

【クロム】

耐容上限量が新たに策定されました。

年齢(歳) 耐容上限量(μg/日)
18以上 500


【目標量】

食事摂取基準を利用する専門職の理解の一助となるよう、目標量のエビデンスレベルが新たに設定されました。

エビデンスレベル 数値の算定に用いられた根拠 栄養素
D1 介入研究又はコホート研究のメタ・アナリシス、
並びにその他介入研究又はコホート研究に基づく
たんぱく質、飽和脂肪酸、食物繊維、
ナトリウム(食塩相当量)、カリウム
D2 複数の介入研究又はコホート研究に基づく
D3 日本人の摂取量等分布に関する
観察研究(記述疫学研究)に基づく
脂質
D4 他の国・団体の食事摂取基準又は
それに類似する基準に基づく
D5 その他 炭水化物

日本人の食事摂取基準(2020年版) 抜粋
※18歳以上、2015年版から変更があった栄養成分を抜粋。 変更点は太字で記載しました。

●(参考) 推定エネルギー必要量(kcal/日)

性別 男性 女性
身体活動レベル
18~29 2,300 2,650 3,050 1,700 2,000 2,300
30~49 2,300 2,700 3,050 1,750 2,050 2,350
50~64 2,200 2,600 2,950 1,650 1,950 2,250
65~74 2,050 2,400 2,750 1,550 1,850 2,100
75以上 1,800 2,100 1,400 1,650

●たんぱく質(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、目標量:%エネルギー)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 目標量※1 推定平均必要量 推奨量 目標量※1
18~49 50 65 13~20 40 50 13~20
50~64 50 65 14~20 40 50 14~20
65以上※2 50 60 15~20 40 50 15~20
※1
範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
※2
65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。

●飽和脂肪酸(%エネルギー)※1,2

年齢(歳) 目標量
18以上 7以下
※1
飽和脂肪酸と同じく、脂質異常症及び循環器疾患に関与する栄養素としてコレステロールがある。コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい。
※2
飽和脂肪酸と同じく、冠動脈疾患に関与する栄養素としてトランス脂肪酸がある。日本人の大多数は、トランス脂肪酸に関するWHOの目標(1%エネルギー未満)を下回っており、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響は、飽和脂肪酸の摂取によるものと比べて小さいと考えられる。ただし、脂質に偏った食事をしている者では、留意する必要がある。トランス脂肪酸は人体にとって不可欠な栄養素ではなく、健康の保持・増進を図る上で積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましい。

●n-6系脂肪酸(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18~29 11 8
30~64 10 8
65~74 9 8
75以上 8 7

●n-3系脂肪酸(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18~29 2.0 1.6
30~49 2.0 1.6
50~64 2.2 1.9
65~74 2.2 2.0
75以上 2.1 1.8

●炭水化物(%エネルギー)※1,2

年齢(歳) 目標量
18以上 50~65
※1
範囲に関しては、おおむねの値を示したものである。
※2
アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。

●食物繊維(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目標量 目標量
18~49 21以上 18以上
50~64 21以上 18以上
65~74 20以上 17以上
75以上 20以上 17以上

●エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)

  目標量※1,2
年齢(歳) たんぱく質※3 脂質※4 炭水化物※5,6
脂質 飽和脂肪酸
18~49 13~20 20~30 7以下 50~65
50~64 14~20 20~30 7以下 50~65
65以上 15~20 20~30 7以下 50~65
※1
必要なエネルギー量を確保した上でのバランスとすること。
※2
範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
※3
65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
※4
脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。
※5
アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
※6
食物繊維の目標量を十分に注意すること。

●ビタミンA(μgRAE/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量※2 推奨量※2 耐容上限量※3 推定平均必要量※2 推奨量※2 耐容上限量※3
18~29 600 850 2,700 450 650 2,700
30~64 650 900 2,700 500 700 2,700
65~74 600 850 2,700 500 700 2,700
75以上 550 800 2,700 450 650 2,700
※1
レチノール活性当量(μgRAE)=レチノール(μg)+β-カロテン(μg)×1/12+α-カロテン(μg)×1/24+β-クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)×1/24
※2
プロビタミンAカロテノイドを含む。
※3
プロビタミンAカロテノイドを含まない。

●ビタミンD(μg/日)※1

年齢(歳) 目安量 耐容上限量
18以上 8.5 100
※1
日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、フレイル予防を図る者はもとより、全年齢区分を通じて、日常生活において可能な範囲での適度な日光浴を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。

●ビタミンE(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18~29 6.0 850 5.0 650
30~49 6.0 900 5.5 700
50〜64 7.0 850 6.0 700
65~74 7.0 850 6.5 650
75以上 6.5 750 6.5 650
※1
αートコフェロールについて算定した。αートコフェロール以外のビタミンEは含んでいない。

●ビタミンB1(mg/日)※1,2

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~49 1.2 1.4 0.9 1.1
50~74 1.1 1.3 0.9 1.1
75以上 1.0 1.2 0.8 0.9
※1
チアミン塩化物塩酸塩(分子量=337.3)の重量として示した。
※2
身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB1の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要量からではなく、尿中にビタミンB1の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。

●ビタミンB2(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~49 1.3 1.6 1.0 1.2
50~74 1.2 1.5 1.0 1.2
75以上 1.1 1.3 0.9 1.0
※1
身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンB2の欠乏症である口唇炎、口角炎、舌炎などの皮膚炎を予防するに足る最小量からではなく、尿中にビタミンB2の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和度)から算定。

●ナイアシン(mgNE/日)※1,2

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※3 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※3
18~29 13 15 300(80) 9 11 250(65)
30~49 13 15 350(85) 10 12 250(65)
50~64 12 14 300(85) 9 11 250(65)
65~74 12 14 300(80) 9 11 250(65)
75以上 11 13 300(75) 9 10 250(60)
※1
ナイアシン当量(NE)=ナイアシン+1/60トリプトファンで示した。
※2
身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
※3
ニコチンアミドの重量(mg/日)、( )内はニコチン酸の重量(mg/日)。

●ビタミンB6(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2
18~29 1.1 1.4 55 1.0 1.1 45
30~49 1.1 1.4 60 1.0 1.1 45
50~64 1.1 1.4 55 1.0 1.1 45
65以上 1.1 1.4 50 1.0 1.1 40
※1
たんぱく質の推奨量を用いて算定した。
※2
ピリドキシン(分子量=169.2)の重量として示した。

●葉酸(μg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2
18~29 200 240 900 200 240 900
30~64 200 240 1,000 200 240 1,000
65以上 200 240 900 200 240 900
※1
プテロイルモノグルタミン酸(分子量=441.40)の重量として示した。
※2
通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)に適用する。

●パントテン酸(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18~49 5 5
50以上 6 5

●ビタミンC(mg/日)※1

年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量
18~64 85 100
65以上 80 100
※1
L-アスコルビン酸(分子量=176.12)の重量として示した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するに足る最小量からではなく、心臓血管系の疾病予防効果及び抗酸化作用の観点から算定。

●ナトリウム(mg/日、( )は食塩相当量(g/日))※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 目標量 推定平均必要量 目標量
18以上 600(1.5) (7.5未満) 600(1.5) (6.5未満)
※1
高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量の量は男女とも6.0g/日未満とした。

●カルシウム(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18~29 650 800 2,500 550 650 2,500
30~74 600 750 2,500 550 650 2,500
75以上 600 700 2,500 500 600 2,500

●マグネシウム(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※1 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※1
18~29 280 340 230 270
30~64 310 370 240 290
65~74 290 350 230 280
75以上 270 320 220 260
※1
通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は、成人の場合350mg/日、小児では5mg/kg 体重/日とした。それ以外の通常の食品からの摂取の場合、耐容上限量は設定しない。

●亜鉛(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18~29 9 11 40 7 8 35
30~64 9 11 45 7 8 35
65~74 9 11 40 7 8 35
75以上 9 10 40 6 8 30

●鉄(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 月経なし 月経あり 耐容上限量
推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 6.5 7.5 50 5.5 6.5 8.5 10.5 40
30~49 6.5 7.5 50 5.5 6.5 9.0 10.5 40
50~64 6.5 7.5 50 5.5 6.5 9.0 11.0 40
65~74 6.0 7.5 50 5.0 6.0 40
75以上 6.0 7.0 50 5.0 6.0 40

●銅(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18以上 0.7 0.9 7 0.6 0.7 7

●セレン(μg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18~74 25 30 450 20 25 350
75以上 25 30 400 20 25 350

●クロム(μg/日)

年齢(歳) 目安量 耐容上限量
18以上 10 500

●モリブデン(μg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18~29 20 30 600 20 25 500
30~64 25 30 600 20 25 500
65~74 20 30 600 20 25 500
75以上 20 25 600 20 25 500