本当に必要な治療のために多職種連携が大切
ーまず、現在取り組んでいらっしゃる医療連携についてお聞かせください。
戸原摂食嚥下に関して支援を受けられる地域作りを目指してホームページで「摂食嚥下医療資源マップ」というもの作っているのですが、いま、嚥下訓練などの支援ができる医療機関が1,300超まで増えました。
立ち上げから考えると、想定よりも参加機関は増えていますが、まだ足りていません。今後も参加いただく医療機関を増やしたいと思っているところです。摂食嚥下支援を全部カバーしないといけないということではないので、検討中であればぜひ問い合わせいただきたいです。
佐々木在宅医療の側からみると、戸原先生の活動は非常に心強いです。患者さんを診て、摂食嚥下の問題を見つけた場合、僕たちの組織にも歯科医はいるけど人数は少ない。医療資源マップがあると、地域ごとに摂食嚥下支援が得意な先生がいることが分かるので、連携を取りやすいですね。
戸原ありがとうございます。患者さんから見れば、いままでは、摂食嚥下支援ができる医療機関を自力で探すか、かかりつけのお医者さんに相談するしかありませんでした。まれに患者さんから私どもにお電話を直接いただくこともありますが、そこまで行動力のある人はいません。医療資源マップがあることによって、患者さんの助けになればいいですし、それに医療機関同士が協力することも起こっているので、そうした連携も促進できればと思います。
医療資源マップは完成形に近いですが、まだ、利用のしやすさという点は改善の余地がありますし、情報もさらに追加しようと思っています。
佐々木ところで、摂食障害があったときに、それが食べる機能の低下なのか、気持ちの低下なのか、我々在宅医療の医師は見極めないといけません。そうしたときに、専門の戸原先生に診ていただく。その結果、機能障害ではないということで、結局、私たちの元に戻ってくることもありますよね。本当に摂食嚥下の機能障害の人たちはそれほど多くはありませんから。ただ、こうした歯科と医科、それに管理栄養士、リハビリがそれぞれ連携して必要な力を発揮し正しく判断していく多職種連携が、在宅医療においてはすごく大事なことだと思っています。
戸原私どものほうでも多職種連携は多いし、連携しないとうまく機能しないのです。たとえば、患者さんから直接依頼があったり、ケアマネージャーさんからの依頼だったとしても、必ず主治医から診療情報を提供してもらうようにしています。情報提供をいただかないと正しい判断ができないし、治療がいまどういう段階でどういう方向に持っていこうとしているのかが分からないからです。
ところで、私の診療の範囲で管理栄養士さんと行動を共にする機会はあまりないのですが、佐々木先生はいかがですか?
佐々木たしかに管理栄養士さんの在宅介入は少ないですね。珍しい存在です。
戸原知り合いに訪問を熱心にやっている管理栄養士さんがいますが、患者さんを一緒に診ませんかと連絡をくれることがあります。その人は栄養指導を進めたいけど、自分だけだと判断がつかないことがあって先へ進めないということなのですが、実はこういう依頼が最も受けやすいです。患者さんに対して何かやりたいことがあったり、どこを見てほしいか具体的に決まっているという状態で連絡をくれるのが理想です。