食事摂取基準
日本人の食事摂取基準(2025年版)主な改定ポイント
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の改定のポイントをご紹介します。
食事摂取基準の活用に当たっては、エネルギー及び各栄養素の摂取量について設定された値だけでなく、
報告書で整理する策定の基本的事項や策定の考え方、留意事項等を十分に理解することが重要です。
詳しくは報告書をご覧ください。
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会 報告書

主な改定のポイント

①食事摂取基準の改定の趣旨

令和6年度より開始した「健康日本21(第三次)」の方針を鑑み、生活機能の維持・向上の観点から「生活習慣病及び生活機能の維持・向上に係る疾患等とエネルギー・栄養素との関連」の節に「骨粗鬆症」が追加されました。
今回、重症化予防の観点から主に中高年者を対象とした脆弱性骨折リスクと食事要因の関連について記述されており、栄養素等摂取と骨粗鬆症との関連について、特に重要なものを以下の図として示されています。

図1 エネルギー・栄養素摂取と骨粗鬆症との関連(出典:厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
策定検討会報告書)

②アルコールの取り扱いの変更
(エネルギー産生栄養素バランスの項へ)

→アルコールは、日本人の食事摂取基準2020年版までは炭水化物の項に記述を含めていたが、アルコール(エタノール)は栄養学的にも化学的にも炭水化物とは異なる物質であり、必須の栄養素でもない。このため、食事摂取基準 2025年版では栄養素に関する章では取り扱わないこととした。ただしアルコールはエネルギー源となるため、エネルギー摂取を考慮する際には、たんぱく質及び脂質の残余には炭水化物とアルコールの両方に由来するエネルギーが含まれることになる。

③栄養素ごとの改定ポイント
【食物繊維】
一部の年齢区分にて目標量が変更されました。
→現在の日本人成人(18歳以上)における食物繊維摂取量の中央値(13.3g/日)と、25g/日との中間値(19.2g/日)をもって目標量を算出するための参照値とした。
※食物繊維の目標量は、日本食品標準成分表(七訂)相当の測定法を用いて算定した値である。
測定法の変化により、日本食品標準成分表(七訂)を用いた場合と日本食品標準成分表(八訂)を用いた場合で、栄養計算の結果得られる食物繊維の提供/摂取量の推計値がかなり異なる(多くの場合、八訂を用いた方が高くなる)ことに留意する必要がある。
数値については「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 抜粋」をご覧ください。
【ビタミン】
不足や欠乏の指標となる生体指標が変わるなど策定方法が変わった栄養素があります。
数値については「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 抜粋」をご覧ください。
【ビタミンD】

目安量が引き上げられました。

年齢(歳) 目安量(μg/日)
18以上 8.5

年齢(歳) 目安量(μg/日)
18以上 9.0

ビタミンDの皮膚での合成も加味した北欧諸国の食事摂取基準における推奨量と
現在の摂取量の中間値を採用し、目安量が設定されました。

【ビタミンB₁₂】

科学的根拠が十分でないため、目安量が設定されました。

年齢(歳) 推定平均必要量(μg/日) 推奨量(μg/日)
18以上 2.0 2.4

年齢(歳) 目安量(μg/日)
18以上 4.0

ビタミンB₁₂欠乏症の回避に必要な最小摂取量算定の科学的根拠が十分でないため、
推定平均必要量を設定せず、適正なビタミンB₁₂の栄養状態を維持できる摂取量として目安量が設定されました。

【鉄】
2025年版は耐容上限量が設定されませんでした。
数値については「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 抜粋」をご覧ください。
→胃腸症状を除き、鉄の過剰摂取と健康障害との定量的な関係が明確でないため、いずれの年齢層においても
耐容上限量の設定を見合わせた。しかし、鉄貧血の治療等の場合を除いて、推奨量を大きく
超える鉄の補給は、合理性がなく、健康障害を生じる可能性がある。また、鉄欠乏でない人が鉄の
摂取量を増やしても貧血の予防にはつながらない。鉄欠乏又は鉄欠乏性貧血の場合の鉄補給は必要で
あるが、医師の指示に従って実施するものであり、個人の判断でサプリメント等を用いて鉄補給を
行うことは控えるべきである。

日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 抜粋
※18歳以上、2020年版から変更があった栄養成分を抜粋。 変更点は太字で記載しました。

●年齢区分及び身体活動レベル(カテゴリー)別の身体活動レベル基準値(男女共通)

身体活動レベル 低い ふつう 高い
18~64 1.50 1.75 2.00
65~74 1.50 1.70 1.90
75 以上 1.40 1.70

● (参考) 推定エネルギー必要量(kcal/日)

性別 男性 女性
身体活動レベル 低い ふつう 高い 低い ふつう 高い
18~29 2,250 2,600 3,000 1,700 1,950 2,250
30~49 2,350 2,750 3,150 1,750 2,050 2,350
50~64 2,250 2,650 3,000 1,700 1,950 2,250
65~74 2,100 2,350 2,650 1,650 1,850 2,050
75以上 1,850 2,250 1,450 1,750

●n-6系脂肪酸(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18~29 12 9
30~49 11 9
50~64 11 9
65~74 10 9
75以上 9 8
妊婦 9
授乳婦 9

●n-3系脂肪酸(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18~29 2.2 1.7
30~49 2.2 1.7
50~64 2.3 1.9
65~74 2.3 2.0
75以上 2.3 2.0
妊婦 1.7
授乳婦 1.7

●食物繊維(g/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目標量 目標量
18~29 20以上 18以上
30~49 22以上 18以上
50~64 22以上 18以上
65~74 21以上 18以上
75以上 20以上 17以上

●ビタミンD(μg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18以上 9.0 100 9.0 100
※1
日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、フレイル予防を図る者はもとより、全年齢区分を通じて、日常生活において可能な範囲内での適度な日光浴を心掛けるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である。

●ビタミンE(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18~29 6.5 800 5.0 650
30~49 6.5 800 6.0 700
50~64 6.5 800 6.0 700
65~74 7.5 800 7.0 700
75以上 7.0 800 6.0 650
妊婦 5.5
授乳婦 5.5
※1
α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含まない。

●ビタミンB1(mg/日)※1,2

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 0.8 1.1 0.6 0.8
30~49 0.8 1.2 0.6 0.9
50~64 0.8 1.1 0.6 0.8
65~74 0.7 1.0 0.6 0.8
75以上 0.7 1.0 0.5 0.7
妊婦(付加量) +0.1 +0.2
授乳婦(付加量) +0.2 +0.2
※1
チアミン塩化物塩酸塩(分子量=337.3)相当量として示した。
※2
身体活動レベル「ふつう」の推定エネルギー必要量を用いて算定した。

●ビタミンB2(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 1.3 1.6 1.0 1.2
30~49 1.4 1.7 1.0 1.2
50~64 1.3 1.6 1.0 1.2
65~74 1.2 1.4 0.9 1.1
75以上 1.1 1.4 0.9 1.1
※1
身体活動レベル「ふつう」の推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:
推定平均必要量は、ビタミンB2の欠乏症である口唇炎、口角炎、舌炎などの皮膚炎を予防するに
足る最小量からではなく、尿中にビタミンB2の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。

●ナイアシン(mgNE/日)※1,2

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 13 15 9 11
30~49 13 16 10 12
50~64 13 15 9 11
65~74 11 14 9 11
75以上 11 13 8 10
※1
ナイアシン当量(NE)=ナイアシン+1/60トリプトファンで示した。
※2
身体活動レベル「ふつう」の推定エネルギー必要量を用いて算定した。

●ビタミンB6(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量※2
18~29 1.2 1.5 55 1.0 1.2 45
30~49 1.2 1.5 60 1.0 1.2 45
50~64 1.2 1.5 60 1.0 1.2 45
65~74 1.2 1.4 55 1.0 1.2 45
75以上 1.2 1.4 50 1.0 1.2 40
※1
たんぱく質の推奨量を用いて算定した(妊婦・授乳婦の付加量は除く)。
※2
ピリドキシン(分子量=169.2)相当量として示した。

●ビタミンB12(µg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18以上 4.0 4.0
妊婦 4.0
授乳婦 4.0
※1
シアノコバラミン(分子量=1,355.4)相当量として示した。

●葉酸(µg/日)※1

性別 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量
妊婦(付加量)※2
初期 +0 +0
中期・後期 +200 +240
授乳婦(付加量) +80 +100
※1
葉酸(プテロイルモノグルタミン酸、分子量=441.4)相当量として示した。
※2
妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、
胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に
含まれる葉酸を400µg/日摂取することが望まれる。

●パントテン酸(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18以上 6 5

●ビタミンC(mg/日)※1

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推定平均必要量
18以上 80 80
※1
L-アスコルビン酸(分子量=176.1)相当量として示した。
特記事項:
推定平均必要量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するに足る
最小量からではなく、良好なビタミンCの栄養状態の確実な維持の
観点から算定。

●カルシウム(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 650 800 550 650
30~49 650 750 550 650
50~64 600 750 550 650
65~74 600 750 550 650
75以上 600 750 500 600

●マグネシウム(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 280 340 230 280
30~49 320 380 240 290
50~64 310 370 240 290
65~74 290 350 240 280
75以上 270 330 220 270

●鉄(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均
必要量
推奨量 耐容上限量 月経なし 月経あり 耐容上限量
推定平均
必要量
推奨量 推定平均
必要量
推奨量
18~29 5.5 7.0 5.0 6.0 7.0 10.0
30~49 6.0 7.5 5.0 6.0 7.5 10.5
50~64 6.0 7.0 5.0 6.0 7.5 10.5
65~74 5.5 7.0 5.0 6.0
75以上 5.5 6.5 4.5 5.5
妊婦(付加量)
初期
中期・後期
+2.0
+7.0
+2.5
+8.5



授乳婦(付加量) +1.5 +2.0

●亜鉛(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
18~29 7.5 9.0 40 6.0 7.5 35
30~49 8.0 9.5 45 6.5 8.0 35
50~64 8.0 9.5 45 6.5 8.0 35
65~74 7.5 9.0 45 6.5 7.5 35
75以上 7.5 9.0 40 6.0 7.0 35
妊婦(付加量)
初期
中期・後期
+0.0
+2.0
+0.0
+2.0

授乳婦(付加量) +2.5 +3.0

●銅(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18~29 0.7 0.8 0.6 0.7
30~49 0.8 0.9 0.6 0.7
50~64 0.7 0.9 0.6 0.7
65~74 0.7 0.8 0.6 0.7
75以上 0.7 0.8 0.6 0.7

●マンガン(mg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 目安量 目安量
18以上 3.5 3.0
妊婦 3.0
授乳婦 3.0

●ヨウ素(µg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
18以上 100 140 100 140

●セレン(μg/日)

性別 男性 女性
年齢(歳) 推奨量 耐容上限量 推奨量 耐容上限量
18~29 30 400 25 350
30~49 35 450 25 350
50~74 30 450 25 350
75以上 30 400 25 350

●モリブデン(μg/日)

性別 女性
年齢(歳) 推定平均必要量 推奨量
妊婦(付加量) +0 +0
授乳婦(付加量) +2.5 +3.5